2015年12月10日

倶利迦羅 London 終了報告

ロンドンから帰国して一週間が経った。おそらく、初めて世界を意識して作られたミュージカルである「倶利迦羅」は
、ストラトフォード・サーカスで6公演、ほぼ満席の内に幕を閉じた。しかも英国のプレスに5つ星の評価を
いただいて。
そしてもの凄い反響だった。良く言われている「世界で通用する」とか「しない」とかという事の真実が,
この公演でハッキリしたと思う。
今回、この作品を作るにあたって、エグエクティブ・プロデューサーとしては3つの事を考えた。
先ず、「日本の伝統を、現代的に進化させたものを作る」ということと、「全てのセクションの水準を一定以上に
保つ」ということ、そして、「あくまでも世界に出る事を前提で制作する」である
まず、日本の伝統を進化させたものとしては、30-deluxによる殺陣、そして音楽的には日本の旋法と短歌のリズムによる
音楽的な統一感であり、これは日本だけにあるオリジナリティーである。
次の「全てのセクションを一定以上に保つ」であるが、これは多くの事を意味し、オリジナル・ミュージカルとしては
日本では今まで無理だったことだ。
まず、音楽的な面では、きちんと教育を受けた歌手が歌うということ、そして、ミュージカルである以上、生バンドによる演奏を
するということ。
そして、アクションは、その道のプロの技を届け、その他の全セクションも同じくである。
最低限これが出来ない状態では、この国の文化水準が疑われることにもなるので、この線を厳守した。
これがとても難しいことで、数々のトラブルはこの件が引き金になったと言って良い。
ただ、最終的には、これは全員が理解したであろう。「世界に通用する」(好き嫌いは別として、酷評されないレベル)
とは、訓練された技術に他ならないのである。「好き、嫌い」は趣味の問題であるので、作品の質とは別次元の話であり、
この「質」を保証するのはプロの技術なのだ。そういった意味で、私は日本のエンターテイメントの技術が決して低くは
ない事は以前から知っていた。ただ、数々の理由で、それが実現されていないのが現状であるが、「倶利迦羅」は
全てのセクションが一定レベルを保った数少ない国産の舞台作品になった。
3つ目の、「あくまでも世界に出る事を前提で制作する」であるが、これもきっと我が国では初めてであろう。
現状では、「倶利迦羅」は日本での上演が出来ない。ストーリテラーは全て英語で進行するし、英語の歌も何曲も
ある。そして、作品の成り立ちからして、台詞は極端に少なく、このまま日本で上演すれば観客は戸惑うであろう。
又、もう一つこの分野で考えたのは、これは特にロンドンの上演に特化した考えであったが「誰も見た事の無い、
完全に新しいもの」である。
この3つの要素が実現できれば、「世界の観客が楽しめる」と言う事は間違いがない、と思っていたが、
これは日本での最終通し稽古で確信に変わった。
結果は大成功。初日から大変な反響があり、我々のこの挑戦が完全に成功した事を実感したし、毎日ほぼ満員で
Sold Outであったことが、それを証明してくれたと思う。しかも初日を見たプレスの記者は5つ星で紹介した。
今回、この挑戦を支えてくれた全ての人に感謝している。「本当にありがとう!」そして、この作品を、次はもっと多くの
海外の皆さんに観ていただけるように、新たな旅に出る事をこれからの自分に課す。

公演を終えたロビーで

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posted by Sahashi at 04:59 | Top news